OpenIFSについて

日本におけるOpenIFS

OpenIFSに関する日本語の情報は無い。限りなく0に近いのではなく、無い。 そもそもOpenとは銘打つものの研究計画を申請して通れば使えるというクローズドに近いプロダクトであり、使うのも気象関係の人だけである。世界中でも現役ユーザーは100人いるか分からない。日本では知っている限り5人しかいない。

しかし私はこのシンプルで使い易い全球予報モデルが好きだ。なので、日本の後輩や同業者がいつかこのモデルに取り組むときの助けになる日が来ると信じてここにメモを綴ることにする。

OpenIFSの概要

OpenIFSの前にIFSの説明が必要になる。 IFS(Integrated Forecasting System)とはECMWF(ヨーロッパ中期予報センター) が運用している統合的全球予報システムである。全球予報をしている気象センターは世界中にあるが、ECMWFの予報はその中でも明らかに予報精度が高い。その予報の中核をなしているのがIFSによる数値予報である。

OpenIFSはIFSの予報モデル部分を研究・教育用途で使えるように整備し公開した簡易版モデルであり、またそのプロジェクト名でもある。 主にヨーロッパ圏の大学で使われており、研究結果やバグリポートなどのフィードバックは次のIFS開発に活かされる。日本では京都大学防災研究所が運用している。

OpenIFSは簡易版であるため、データ同化・海洋モデルなどIFSの一部機能が取り除かれており完全に同じものではない。しかし、大気状態の予報に関しては全く同じコアが用いられている。 振られているバージョン番号はIFSと同一で、IFSから数年遅れでOpenIFSに導入される。2018年9月現在は 40r1 (cycle 40 release 1) が最新版であり、来年をめどに次のメジャーリリースが出る予定である。

IFSとの違いについてはこちらを参照のこと。

https://confluence.ecmwf.int/display/OIFS/2.1+OpenIFS+compared+to+IFS

モデルのインストール

OpenIFSはECMWFのソフトウェアである GRIB_API を必要とする。次回リリースからは後継のecCodesに対応する。 \ そのため GRIB_API → OpenIFS の順でインストールする。依存するLAPACKも含めて全て同一のコンパイラコンパイルする必要がある。 コンパイル・インストール手順については以下に公式ドキュメントがある。日本語でも別の記事で解説する。

https://confluence.ecmwf.int/display/OIFS/5.+OpenIFS+Installation

モデルの情報

OpenIFSは全球スペクトル静力学モデルである。 グリッドは40r1までは 適合ガウス格子 (Reduced Gaussian Grid)が、41r1以降では八面体逓減ガウス格子 (Octahedral Reduced Gaussian Grid) が使用される。 このグリッドは緯度が高くなるほど東西方向の格子点数が少なくなるためCFL条件が緩くなる利点がある。

入出力のファイル形式は共にGRIB形式で、出力する変数はnamelistを設定することで操作できる。出力の操作はこちらに詳しい。

https://confluence.ecmwf.int/display/OIFS/How+to+control+OpenIFS+output

入力ファイルは「大気力学過程の初期値」「大気の物理過程の初期値」「地表面の初期値」「予報期間中の気候値」の4種で構成されている。 \ 基本的にはOpenIFS support teamに連絡して用意してもらうのだが、ERA再解析値から作成することもできる。初期値の作成法に関しては別の記事で述べる。

謝辞

最後に、大小さまざまな問題のサポートに尽力してくれる OpenIFS support team の Glenn Carver と Gabriella Szepszo に感謝致します。

I would like to thank Glenn Carver and Gabriella Szepszo for their kind supports.